GCOE「普遍性と創発性から紡ぐ次世代物理学」2009年度全体シンポジウム参加日記

これに行ってきました http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~gcoesymp/2009/index.ja.html

いろいろあったのですが、端的に言うと物理はフロンティアが狭まりつつある・・・そんな風に考えていた時期が私にもありました、という感想。フロンティアはじつは前進していっただけで、ちょっと考えないとわからない所に行ったとか、あるいは従来物理の範疇ではなかった分野にまで浸出していったりして、むしろ表面積は広がっているということはよく分かりました。

独断でおもしろかったと思った話を3つ(記憶を頼りに書いているので正確さの保証はない。)

核物理のやつ

たしかコンパクト星級の超高密度のプラズマがハドロン量に応じて点>線>スポンジ>板と相転移するのだけれど、ベンゼン環と炭素鎖からなる高分子がベンゼン環の量に応じてまったく同じ相転移を示すらしい。しかも、スポンジ層をとる混合比というのが定量的に一緒になる。これは、プラズマでの遮蔽されたクーロン力と、高分子サイドの「炭素鎖結合がそんなに遠くにいかないでよ〜とする力」がたまたままったく同じ距離依存性を持つかららしい。

なんでそんな所が、っていう2カ所がつながっているとは。

コレステリックブルー

なんか、液晶的なやつでコレステリックブルー相とかいうのがあるらしくて、単体がまず1次元構造をなし、その1次元構造がxyz3軸に組み合わさった立方格子をなしているという物質の相があるらしい。単体はこの1次元棒内では自由に流動できるのだけれど、3軸構造全体は固体的に振る舞う。この3軸構造のスケールがちょうど可視光で、青く見える。さらに、圧力か何かに応じて格子間隔が変わるらしく(密度が変わるのではなく棒の数が増えて格子が再構成される??)圧力に応じて色が連続的に変わるとか。

何がウケたかというと、「1次元方向には流体で・・・」のくだりで、たしかアシモフの小説で、しかも何十億年後とかの話で、動く歩道の原理で「1次元方向には固体だがのこり2次元方向には液体として振る舞う物質」とか言うのが出てきたのを思い出した。

あるプログラミングコンテストを総嘗めにしてる奴がいる

これは一番衝撃をうけた話。

「神経スパイク予測コンペティション」という一風変わった国際プログラミングコンテストがあるらしい。どういうルールと言うと、本物の生きたニューロンを1個とってきて、
(1)ランダムな入力を、時間の関数として人間が与える。
(2)与えている間、そのニューロンの出力を記録しておく。

で、コンテスタントには、入力の全部と出力の前半分が与えられるので出力の後半分を予測しなさいというのが問題。

コンテストサイトこれ http://www.incf.org/community/competitions/spike-time-prediction/

で、コンテストは2007年から始まって今まで3回あったのだけど、じつは3回とも優勝は同じチーム。それが何と京大の物理学教室の人だったという話 http://www.ton.scphys.kyoto-u.ac.jp/~shino/

生物学でも情報学でもなくて物理学が勝つというのがすごいよね〜。ときどき調子に乗って「基礎物理学こそフロンティアを開拓する力を持っているのだ」とホラを吹いていたのだがまさか本当だったとは。

もちろん、1つの細胞の振る舞いがわかったところで、ニューロンのつながり方とか結合の変化のしくみとかわからないことだらけなのだし、モデルと実際の生物の乖離もそうとう大きいらしいし、「理論はあとからついてくる(キリッ」とかいってとりあえず回してみている人もたくさんいるらしいし、その割りにまだ知性を持ったらしい兆候はないらしいですが、なにしろグリーンスパコンが学生でも買えるくらい安くなったこのご時世ですからある日突然にこ動とかに「脳を作ってみた」とかがうpされてもおかしくない段階に入っているのではないだろうか。

で科学雑誌Newtonの3月号でちょうど脳の特集をしてるってさ。マジかよニュートン買ってくる