パインズ先生講演 〜 万物の理論か、多は異なりか
冒頭に。
核子もクオークも要らず、1920年代にすでに解明された原子核と電子の量子論で完全に記述できるはずの、マクロレベルの物性・生命については、現代の物理学はほとんど説明を持たない。日常現象を説明することにかけては、String Theoryとかは、The Theory of Everythingというよりも、The Theory of Nothingである。
キーワード
- 創発(emergence)
- やわらかい、固い、あるいは、生きている物質においてあらわれる組織化現象。
- 複雑受容物質(complex adaptive material(?) )
- 環境への適合により複雑性を発現する物質。
- プロテクト現象(protected behaviour)
- マクロな物理量の実験を積み重ねても、神によるプロテクトでもかけられているのか、ミクロな性質の一部が、どうしても解明できない現象。あるいは、ミクロな構成要素によらず共通に発動するマクロな現象。
一つの結晶を取り上げても・・・
反磁性、超伝導、擬似ギャップ、フェルミ液体、常伝導などの相が共存している。これらを一つのハミルトニアンで書くことができるか?できない。
若い人たちへの宿題。
万物の理論陣営の課題。
・宇宙の起源は何か、銀河、恒星、惑星の形成メカニズムは?
・ダークマター、ダークエネルギーの正体は何か?
・量子論を超える枠組みは必要なのか?
・万物の理論はあるか?それはSuperstringか?多は異なり陣営の課題。
・創発を制御することはできるか?
- - いっぱいあるので中略 - -
・生命を構成する理論はあるか?
・意識とは何か、意識を生み出すことはできるか?
石田憲二先生の、「高温超伝導が活気付いている今とくらべて、超伝導理論が世に出た当時の状況を教えてください」という質問に対して。
BCS理論が世に出る直前、世界で超伝導理論を探求していたグループは5つほどしかなかった。それにはランダウのグループが含まれていた。またファインマンも2年ほど前から超伝導に凝っていた。
BCS理論が世に出たとき、ランダウのグループは早くからその正しさを確信していた。ファインマンはだれか他人に先んじられたことがショックで、届いたレターを6ヶ月の間読もうとしなかった。墓に入るまで、BCS理論は誤りであり、超伝導を説明するミクロな理論は作りえない、と考えていた人もいた。いまや状況は異なり、高温超伝導を研究しているグループは500から5000にのぼる。